陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
ヨコシマな心を照らしていた。
今日の陽子は何か変だな、あんまり、というか、ほとんど喋らないし(いつもは、うるさいくらい喋り続けるのに)、何か思い詰めたようにしているし。
太郎のその「今日の陽子は何だか変予感」は、その日の夜、現実となって忽然と太郎の前に姿を現した。
M市の夜景が一望できるレストラン「蜃気楼」の最大のウリはその夜景で、料理そのものは、ミシュランならマイナス五つ星くらいであったのだが、陽子は、定番のカツサンドを注文し、定番のビールを飲んでいた。そうなると当然、太郎も同じ物を食い、同じ物を飲むことになる。
この「カツサンド&ビール」は、何かひっかかるよなぁ、太郎の性能の悪
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