陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
ちの一校に受かった、と言いそびれていた。
その日午後三時、太郎は、陽子ご指定の汽車に揺られてM駅に降り立った。駅の改札口前には、陽子が待っていた。
陽子を見た太郎は、一瞬、フリーズしてしまった。陽子は、ジーンズのショートパンツをはいていた。それもピッチピチを。
「や、太郎」
「おっ、よ、陽子」
太郎の視線は、陽子のスラリと伸びた足の膝から上の部分(ひらたくいうと太股)に、吸い付けられたままだった。
陽子は、さっさと歩き出し、太郎は、とっとと後をついていった。
陽子が向かおうとしているのは、M駅のすぐ裏手、仏舎利塔のある一応「山」、という名前のついた、どう見ても誰が見ても
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