陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
省していた太郎に、突然、陽子から電話が架かってきた。
「太郎、オッハヨ。起きてた? 起きてるよね、当然。もう朝の六時だもんね。あのね、あたし、教員採用試験落っこっちゃったよ。でもね、広告代理店には合格したんだ。合格祝いやろうよ。今日にでもおいでよ」
「へえぇ、落ちたんだ。陽子がねぇ。落ちたんだ。へえぇ、落ちたんだ」
「何よ、落ちた落ちたって、嬉しそうに」
「い、いや、べ、別にそういう訳じゃ・・・」
「三時M駅着のでおいで。迎えにいってやるから」
「う、うん、判った」
あの陽子が、教員採用試験に落ちた、ということがにわかに信じられない太郎は、彼自身が幸運にも三校受けた大学院のうちの
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