陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
りに父親の世話をし、テコンドーのトレーニングを続け、油絵を描き、勉強に励む、という具合で、陽子の一日はあっという間に過ぎていった。
 そんな陽子の前にひょっこり現れたのが太郎だった。それまで、多くの男の子から多くのラブレターを貰い、一読して、破ってポイしていた陽子は、今までにないタイプの男である太郎に若干の興味を抱いたのだった。ちょうど、動物園のサルのオリの中で、他のサルとはまったく異なる行動を取ってボスザルから厳しくお仕置きをされているサルを見たときのような。
 それで、太郎の手紙に返事を書いた。今まで一度だって返事など書いたことがなかったのに。その結果が、現在へと繋がってしまった、という訳
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