陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
郎のモデルなんかならない!」そう固く固く決心し、食事が済むとさっさと部屋に引っ込んでしまった。
襖一枚の隔たりは、地球と月以上の距離がある、しみじみそう思う太郎であった。
三月十日
雪の残る寒い一日。萩駅に着いた二人は、駅前のレンタル自転車に乗って、吉田松陰邸跡や高杉晋作邸跡を見学し、指月公園を回り、大した感動も覚えず、午後一時三十三分発の鈍行列車に乗って萩駅を離れ、当初方針どおりひたすら鈍行を乗り継いで、午後八時三十三分にふる里の駅に帰って来た。
そこには、待っているはずのない、若しくは、待っていて欲しくないナンバーワンの人が、鉄仮面のような顔をして待っていた。その人は、陽
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