陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
通り過ぎてゆく。
 二人も、「最近の年寄りはほんとヨケイナコトばっかりノタマッテ、だから好かれないんだょ」、そう思いながら彼らを眺めている。
それにしても砂丘は大きかった。二人は、そのスケールの大きさに圧倒され、かに寿しを食い終わった後もベンチに座り、ただぼんやりと砂丘を眺めていた。
 しばらくして、よっこらしょ、とえらく年寄り臭いかけ声を発して陽子が立ち上がった。
「太郎、海の見える方に行ってみよう」
「あゝ」
小高い丘状になっている所まで、ベンチから真っ直ぐゆっくりゆっくり歩いて行く。砂に足を取られながら丘の斜面を登り切ると、目の前に日本海が広々と広がっていた。見渡す限りの
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