陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
行の旅を満喫していた。
 陽子は思う、あたしなんで太郎なんかと一緒に旅してんだろ?
 答えは見つからない。
 目の前で、大口を開けて鼾をかきながら爆睡している太郎を見ると、こいつを好きになる、ということは絶対にあり得ない、そう確信するのだが、自分自身でも説明のつかない心のベクトルが、なぜか陽子を太郎の方へと向かわせているのだった。
 鳥取駅からバスに乗って砂丘へ。砂丘のベンチに腰掛けて、鳥取駅で買ってきたアベ鳥取堂の「鳥取名物元祖かに寿し」を二人が食していると、高齢者御一行様おおむね二十人位が、「最近の若いもんは、こんな所でも平気でメシ食うんだねぇ」などと眉をひそめながら二人を見い見い通り
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