陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
の有名な鳥取砂丘を見るためにだった、のは陽子だけで、太郎はというと相も変わらず陽子のヌードを描くことのみに執着しており、砂丘なんかどーでも良かったのだが・・・
向かい合わせの席に座り、園部駅で買った駅弁を頬張りながら、太郎は白いセーター姿の胸をチラ見していた。
汽車はそんな太郎のヤラシイ思惑を乗せてゴトゴトとゆーっくり走ってゆく。もう、太郎も鈍行列車に苛つくこともなく、座席に横になってうたた寝したり、陽子の胸をチラ見したり、ごく希に車窓を流れる風景に目を留めたりしながら時間をやり過ごしていた。
陽子はといえば、これは相変わらず本を読んだり、列車内を探索したり、軽く居眠りしたりして鈍行の
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