陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
の一言がいけなかった。この一言が陽子の怒りに油を注いだ。
「何て言ったですって! あーも、サイテー。また、ハイキックされたいわけ、アンタ!」
「い、いや、そっ、それは困る」
「なーにが、そっ、それは困るよ。ビールがない! ビールがないぞ、太郎!」
「よ、陽子、あ、あんまり飲まない方が・・・」
「へっ? あたしがあたしのお金で飲んでんの! あんたみたいなドンカン男に言われたかぁねぇよ!」
陽子の怒りは留まるところを知らなかった。結局この夜、彼女はビール三本を空にし、それでも足りずに日本酒一合を飲み、「ってんだよ、太郎のバーカ」という言葉を最後に、バタンとベッドに倒れ込み、そのままクゥク
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