陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
ば、何某かのリアクションを起こしていたであろう、が、太郎はまったく気が利かない男だった。それで、言った言葉が「なんで?」
陽子は明らかにムッとしてそれっきり黙ってしまい、絵の前を離れてさっさと美術館の外に出てしまった。
「なにムクレテルんだよぉ」後を追いかけた太郎が訊いても、ダンマリのまま、その日の宿泊先である「タワーレステル」に直行してしまい、よっぽど頭にきていたのか、正常な判断心を無くしていたのか、陽子はなんとダブルの部屋をとったのだった。
「太郎! カツサンドとビール!」
部屋に入るなり陽子はそう大声で言って太郎を見据えた。
太郎は陽子の迫力に押され、言われるがままにビール
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