陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
を観賞する女、陽子の姿があった。
 太郎の目は、今や完全にマハのバストと、キュッとくびれたウエストと、そこから下に続くあの部分とに吸い付けられていて、今にもスペシューム光線を発するのではないか、と危惧されるほどの熱を帯びていた。
 透き通る滑らかな白い肌、両手を頭の後に組んで、挑発するようにこちらを見つめるマハを前に、太郎はその場にいることさえ忘れてしまっていた。
「あーぁ、陽子、劣等感感じるぅ」
 突然耳元で声がした。それで正気づいた太郎が左横を見ると、そこには無念の形相を浮かべてマハを睨み付けている陽子がいた。
「劣等感感じるぅ〜」
 もう一度言った。その時、気の利いた男であれば、
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