陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
には理解されないんだ、やっぱ。ね、太郎どう思う?」
「・・・・・・」(沈黙は金ナリだもんね)
「これが、坂本繁二郎。さっきの青木と同郷で福岡県の久留米出身。東京芸大で同じクラスでライバル的存在だったんだよ。坂本は長生きしていい作品をたくさん残してる。このような中間色を多用した後期の作品に彼の特質があるわね」
ピカソ、シャガール、ゴーギャン、マチス、モネ、キリコ、藤田嗣治、安井曾太郎、シャニック、梅原龍三郎、サム・フランシスなどなど、陽子は、美術評論家にでもなったように滑らかに自分の教養をひけらかし続けた。高い鼻はますます高くなり、普段でも反らしている胸を一層反らしていた。陽子の解説を熱心
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