陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
を読んだり適当に眠ったり車内を探索したりして暇を潰していたため、元気一杯わくわく状態だった。
「太郎着いたよ」
「判かってるよ、そんなこと」
「あっ、そ」
 そう言い残すと陽子はさっさと汽車から降りて、「早く早く、急いで太郎、早くしないと大原美術館閉まっちゃうよ」と太郎をせかせた。
「そんな急がなくても大丈夫だ。午後五時閉館なんだぜ」
「何のんびりしたこと言ってんの。だから急ぐんでしょ!」
「は?」
「だから素人は嫌なのよ。いい、たかだか二時間やそこいらで大原美術館の作品を全部じっくり見られると思ってんの?」
「できるんじゃネ」
「太郎あんたほんとアホだねぇ
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