陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
子、よく来たな」(ムフッ)
「太郎、出迎えゴクロウ!」
「おお、さぁ、行くぞ! お前の受けた屈辱をすぐさま晴らせ」(ムフフ)
「太郎、なに力んでんの? 顔真っ赤だよ、熱でもある?」
太郎は、一刻も早く陽子とのムフフの時を過ごそうと、タクシーを奮発し、古い家の古い八畳間の古い間借りに急いだ。太郎の頭の中では、(あーもしよう、こうもしよう、そしてああして、こうして・・・)とムフフが駆け回っていた。
陽子は、そんな太郎をチラッと見ただけで、彼の頭の中をムフフが駆け回っていることを察知したが、おくびにも出さず窓の外を眺め
「へぇ〜、フェニックスとかあるんだぁ」
などとしきりに感心
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