陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 


陽子からのハガキを手に
「K駅、午後二時、南斗三号・・・K駅、二時、三号・・・K、二、三・・・」
そう繰り返す太郎の頭は完全にオーバーヒートを起こし、今にも蒸気を吹き出しそうな様相を呈していた。
 その日、その時間、その駅で、その汽車を、太郎は二時間前から待っていた。太陽がギラギラ照りつける真夏、太郎は暑いという感覚さえ無くし、腕時計を何度も何度も見ながら待合室内をウロウロ徘徊し、駅員から怪訝な目を向けられていた。
 そして・・・ようやく・・・ようやく陽子はやって来た。
太郎のムフフは頂点に達していた、が、その素振りも見せず(と、本人だけが思っていた・・・)
「陽子、
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