陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
の所に泊めてネ」陽子からのハガキを受け取ってフリーズしたのは、太郎が大学二年になったばかりの四月だった。
その一週間後、「八月九日に行くからね」とのハガキが届き、太郎はまたもフリーズしたのだった。
よろしくね・・・二、三日泊めて・・・えっ、えっ・・・と、泊まるということは・・・ははは・・・ということは・・・ムフ、ムフフ・・・・・・ 妄想を逞しく膨らませ、それ以降、太郎はムフフ一色に染まった毎日を過ごすことになった。
とりあえず整理整頓。散らかし放題の古い家の古い八畳間の古い間借りを整理整頓。
整理整頓を始めた太郎は、これまで気にも留めなかった万年床に目をやり、これも当然日に干して
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