陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
ったからに他ならない。
 入学式当日から白地に赤色で「中核」と書いたヘルメットを被り、角材を持った訳の判からない一群が、「シュプレヒコール! 安保反対、安保反対」と連呼しながらキャンパス内でデモを繰り広げていた。
 太郎は、それをぼんやり眺めていたが、ゲバラのようにかっこいい男は一人もいない、皆ダサダサでデブだ、俺のスタイルに馴染まない、得意の独断と偏見でそう判断し、あっさりとゲバラ信仰を捨てたのだった。
 陽子の呪縛から抜け出すためには、物理的に彼女よりも強くならなければならない。それには、そう、ジョーだ。ボクシングだ。それしかない。K大には、テコンドー部はなかった。格闘技系の部活では、空
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