石を投げたら土をかけろ/木屋 亞万
 
ない
鳴き喚く蝉と変わらない
わかりあっているのではない
息継ぎがうまくかみ合ってるだけだ

青空に立ち込める暗雲
突然降りだす雨
濡れても未だ暑いまま
振り返っても
見たいものはひとつも見えない
記憶の中が腐っていく
思い出の詰まった瓶に
生えていくカビは
瞬く間に広がって
こそいでもこそいでも
腐ってしまうんだ

もう手遅れだ
元々薄汚れた過去だった
殺菌しても除菌しても
臭い物にした蓋は
二度と開けられないまま
瓶ごと捨てる決意を迫る

次はもう助けないだなんて
そんな
今回だって助けなくて良い
出口へ急ぐ者の肩を
無理やり掴んで止めた
[次のページ]
戻る   Point(5)