嘘つきの星のもとに/まーつん
 

 なにも
 寝たきりの病人
 という訳じゃない

 ただ、狭い部屋から
 出ていく勇気が
 なかっただけ

 勇気を持った人々は
 雲の上や、谷の底にいて

 彼には到底
 受け止めきれない
 喜びや、痛みを

 岩のように背負ったり、
 シャンパンのように
 頭から浴びながら
 日々生きていた

 そうした
 手の届かない所で輝く
 生の火花に、触れてみたい

 彼が
 やろうとしていたのは
 多分、そういうこと

 火傷が怖いくせに

 だから、
 言葉で自分を作り直し

 痛みのない物語の世界を旅し
 失望のない詩の世界で
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