未完のエチュード ?/Giton
って人の多いスポットからスポットへただ移動するだけだ。しかも眠い。何の記憶も残っていなかった。
崩れたアスファルト道が上まで延びた埃っぽい丘に、これまた薄汚れた木造の堂宇を据えたからといって、何の感動があるのだろう。しかし、とにもかくにもその堂閣たちは、そこに据え置かれたまま1200年以上動かないでいるのだった。
彼は受け取ったパンフレットやら能書きの紙片をつぎつぎに渡してよこすのだが、それを読んでぼくが感銘を受けるとは思っていないのだし、彼自身どうでもよいものだからこちらに振って寄越すのだ。つまり芥箱よりはましな処分先というわけだ。
ぼくには、鐘楼も大仏も──創建者、保守
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