自然/葉leaf
も十分コミュニケーションが取れるし、酒の席でしばしば起こる不毛な雑談を好まず、自分ひとりの時間を大事にしていた。そんなとき、上司からは、酒を飲まないのはデメリットだよ、などと圧力がかけられるのだった。
そんなとき、私は押しつけがましさに不快感を感じると同時に、目の前に海が開けるような、茫洋とした感覚を抱いたものだった。海が風景をすべて埋め尽くし、船が漂うのが見える、その私と船との間にある海のひろがり、そのくらい大きな隔たりが私と上司を支配していた。私と上司との考え方の違いを生み出しているものは何も自然の風景ではない。人と人とのやり取りや因習という人間臭く生臭いものの積み重ねのはずだ。だが、そ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)