さよなら、お母さん。/永乃ゆち
きなかった。
弱々しくベッドに横たわる女性を見ると
涙が止まらなかった。
その涙は、悔しさの涙だった。
今更この病人に、何を責められるだろう。
二十年以上前のことを、はたして伝えるべきなのだろうか。
わたしは。精神を病んでいる。
もう十年以上、薬を飲み続けている。
幼い頃の経験がトラウマになり
PTSDと言う診断名が付いた。
ドクターは、昔あった嫌な出来事や思いを
母に伝えることから、第一歩が始まるんだよと仰った。
けれど。
わたしは未だにそれができずにいる。
母を責めてるようで、憎悪や攻撃の対象に
してしまいそ
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