さよなら、お母さん。/永乃ゆち
 
いそうで、怖くて言えないのだ。



あの頃わたしの精一杯で生きていた。




友達の前では明るく振る舞い
家では厳しい母に気に入られようと
良い子でいるよう努めた。
けれど毎日怯えて暮らしていた。




それでも、わたしは生きてきた。




もう、そろそろいいんじゃないだろうか。
母のしたこと、『お兄ちゃん』のしたこと。
そして二人の存在自体を忘れ去っても。
暴力の呪縛から解放されても。
いいんじゃないだろうか。


十八で逃げ出したわたしだが
何からも逃げきれてはいなかったのだ。


わたしが逃げる方法は
真っ暗な世界に堕ちてゆくことだけだと思う。


今は、その時期や手段について
綿密に計画をたたている。


さよなら、お母さん。
あなたのこと、大嫌いだったよ。
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