さよなら、お母さん。/永乃ゆち
 
買った。
何か大きなことを成し遂げたような達成感があった。



それから二十年以上が経った。
初めての車は今はない。
この二十年間で、わたしの生活や身辺は
目まぐるしく変わって行った。


死にたくなるほど辛いことも
心から感謝する幸せなこともあった。
しかしその間、母とはずっと会わずにいた。



母が入院したと、親戚から聞き
二十年ぶりに故郷に帰ったわたしが見たのは
あの、厳しく威圧的な母ではなく
痩せ細ってしわだらけになった
か弱い初老の女性だった。



話したいことはずっとずっと前からいっぱいあったのに
わたしは一言も話すことができな
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