さよなら、お母さん。/永乃ゆち
の男は『顔も見たくないって言われたから』と言った。
わたしは、悔しさがこみ上げてきて
朝食もとらずに学校へ行った。
学校から帰ると、母の第一声はこうだった。
『お兄ちゃん(男の事をそう呼んでいた)と
ケンカしたの?仲直りして欲しいな』
母は、なぜケンカしたのか理由は聞いてくれなかった。
ただ、仲直りしてくれと言った。
わたしは悔しくて悲しくて泣きながら
『お兄ちゃん』に謝りの手紙を書いた。
暴力はそれ以降も
『お兄ちゃん』が見合い結婚すると言って出て行くまで
ずっと続いた。
わたしは早く家を出たかった。
母のことを嫌いにならない内に。
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