さよなら、お母さん。/永乃ゆち
 

暴力で支配されていたあの家から。
とにかく逃げ出したかった。


そして高校卒業と同時に、文字通り逃げるようにして
実家を飛び出した。

新しい街は、当時の新幹線で
六時間くらいかかる場所に決めた。
遠く。
遠く逃げたかった。
もう。
母の顔もあの家の思い出も捨ててしまいたかった。




そこでの生活は決して楽ではなかった。
何の知識も資格もない十八歳が
一人で生きて行くには、困難な場所だった。


それでも。
わたしはがむしゃらに働いた。
睡眠時間を削って、遊ぶこともなく
ただひたすら、働き続けた。


そうして念願だった自動車を買っ
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