さよなら、お母さん。/永乃ゆち
その男も。
母がスナックに働きに行っている間
毎晩わたしを殴った。
顔を殴ると、母にばれてしまうので
お腹や背中、腕や足などを
殴られたり蹴られたりして
まだ小さかったわたしは
勢いで吹き飛ぶほどだった。
今になって思うのは
その男がとても冷静に
わたしを殴っていたと言うこと。
そしてそれはしてはいけないことと
きちんと認識していたこと。
カッとなって衝動的に殴る方が
まだましだと思った。
毎日。母からも男からも殴られ
早く殺してくれと思っていた。
早く死にたいと思っていた。
それでも、母に男の暴力を言い出せなかったのは
母が、やっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)