川口晴美詩集『lives』を読んでみた/光冨郁也
 
の女とわたしが重なるようで、しかし「わたし」はその女にはならない。
(阿部定事件。昭和十一年、二・二六事件を背景とした時代。性器を切り取られた男の死体。布団の敷布に「定吉二人キリ」の血文字があった。タイトルの「一人キリ」はこの血文字に対比できる)
 最終部分だけ引用しよう。

 わたしは、殺さない。わたしは一人だから。思い出しても、誰かと会っても、一人、一人きりで、行くのだから。(「一人キリ」最終部分)
 

渋谷シネマライズ『リリィ・シュシュのすべて』 「少年壊れやすく」
 十四歳の男の子と女教師の話。少年は万引きをし、生活指導室に女教師とふたりでいる。女教師は「この子もわたしの
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