蠍の火/dopp
うかもしれない。蠍はああ、食べられてやれば良かったと思いながら死ぬし、いたちはああ、腹一杯食いたかったなあと思いながら死ぬんだ。それってすごく悲しいよ。本当に悲しいなあ。」僕は答えた。「質量保存の法則だよ。バクテリアだよ。蠍といたちがそこで死ななかったらその後の世界は無いんだよ。今だってそうさ。一挙手一投足がさ、未来の全てを規定してるんだぜ。あそこでそのバクテリアが生を得られなかったら、そこから分岐する全ての命が消えてなくなるんだ。僕たちはさ、生きているだけで選ばなかった未来にあるはずの全てを抹殺しながら歩いてるんだよ。だから君の全てには過去と未来が含まれているのか聞きたいんだ。生きる事に僕は過去
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