蠍の火/dopp
な。走って走って蠍を追いかける位なんだ、きっとすごくお腹が空いてたよ。それでやっと捕まえてさ、だって刺されるかもしれないんだよ、きっとさ、蠍の事を考えてるのも分からない位走ったんだと思うな。すごく怖い真っ黒な目までしてさ、それなのにふっと蠍は落ちていっちゃうんだ。あっ、て。固まるだろうな。井戸の端を行ったり来たりしてさ、何度も淵を覗き込むんだ。そしたら気づくんだよ、自分が蠍のことを考えてるって。蠍、蠍って頭の中で喋るんだ。そうしたらもうその一日は蠍の一日なんだよ。本当はお腹が空いてて、すぐにでも何か食べなきゃいけないのに蠍の一日なんだ。もしかしたらあんまりがっかりして食べ物を探すのをやめてしまうか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)