指輪と石/まーつん
 
 薔薇の花が一輪
 掌に横たわっている

 棘だけが未だ鋭く
 チクリと私の皮を刺す

 死して尚
 痛みを与える
 美しさ

 庭仕事を終え、
 麦藁帽を脱いで
 額の汗をぬぐう私
 片方の手に包むのは、
 気まぐれに折り取った

 一輪の薔薇

 夏の陽射しが
 私の脳裏に刻むのは
 我が家の小さな庭を描いた
 光と影の陰影画

 暗い茂みの懐から
 のそりと這い出たカマキリが
 明るい世界に首を振り
 鎌をもたげる

 私は
 薔薇の香を嗅ぎながら
 それを眺める

 この世界には
 同じだけの密度を持つ
 光と闇があり、互
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