指輪と石/まーつん
薔薇の花が一輪
掌に横たわっている
棘だけが未だ鋭く
チクリと私の皮を刺す
死して尚
痛みを与える
美しさ
庭仕事を終え、
麦藁帽を脱いで
額の汗をぬぐう私
片方の手に包むのは、
気まぐれに折り取った
一輪の薔薇
夏の陽射しが
私の脳裏に刻むのは
我が家の小さな庭を描いた
光と影の陰影画
暗い茂みの懐から
のそりと這い出たカマキリが
明るい世界に首を振り
鎌をもたげる
私は
薔薇の香を嗅ぎながら
それを眺める
この世界には
同じだけの密度を持つ
光と闇があり、互
[次のページ]
戻る 編 削 Point(11)