森山恵詩集『みどりの領分』について/葉leaf
 
れない。確かに文学は日常生活における直接的な感受を表現するものであり、そこに抽象化や厳密化の操作が加えられることはない。だが、機械論的自然観のベースになっている、人間も自然も同質であるという思想には、どこか近代以前から人間の世界認識に宿っている、人間と自然との親密な交感がひそかに反映されていないだろうか。ここで森山恵の詩集『みどりの領分』(思潮社)を検討することで、現代の詩において人間と自然とはどのように関わっているのか見ていくことにしよう。

夜が明け初める
―――――――
空はその肌を開き、うるみ明るむ
にじみざわめき

夜明け前の鳥、はじめにアカハラが
囀り、わたしの眠り――
[次のページ]
戻る   Point(2)