空白の館/アラガイs
斜め前にはリハビリ室と書かれた扉がある。わたしはしばらく待たされるらしいのでその様子をゆっくり観察することができた。そのほとんどが家族連れなのだが、待機していた男女幾人かの手足は肱や膝から左右に折れ曲がり、中でも言葉を発するときには必ず首が大きく斜め上に傾け、唇は上下に捻れてしまうという特徴的な共通する動作をわたしは発見していた。 しかしそのちぐはぐな動きでさえ、今のわたしにはコマ送り画像でも見るかのような沈着とした形象に写っては残像はすぐに消えていった。
ここは患者よりも事務服の姿が目立つ場所だ。一人めは何かを着た誰かが通り過ぎた。誰か二人めの後にわたしは名前を呼ばれた。時間は気にならなかっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)