ナニカ/草野大悟2
を知った秀一郎は、親父の後を継がずに正解だったな、秋江に笑いかけながら珍しく上機嫌で酒を飲んだ。
手形が一回目の不渡りとなるや銀行は一斉に融資を打ち切り、それまでの融資を回収しようとした。抵当権の付いた物件は全て銀行の物となった。しかし、秀一郎と幸恵のために秀明が建てた二階建ての家にだけは抵当権が設定されておらず、没収を免れた。
破産寸前にあっても秀明は最期まで秀一郎を溺愛した。それほどまでに自分を愛してくれた秀明を、秀一郎は、「金の亡者が!」そう言って心底軽蔑していた。
人は遺伝子の乗り物だ。秀明や秀一郎は、金と暴力と政治力を使えば何でも自分の思う通りになる、と信じきっていた。人のこ
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