ナニカ/草野大悟2
 
階に上がっていった。
 摩耶は何かにつけて高圧的で、野津にはことごとく辛く当たり、その上性器を弄ぶなどの性的虐待まで加えた。野津の心の奥底に、女に対する憎しみが植えつけられ、次第に大きく膨らんでいった。
 家事はほったらかしで、競輪や競馬にのめり込み居酒屋通いを続ける、という毎日を送る摩耶を、秀一郎は何度もどやしつけ、殴りつけた。しかし、それでも摩耶の行状は改まらなかった。たまりかねた秀一郎がこれでもかというほど殴りつけると、「あたしにマジで手を上げるなんて百年早いよ、あんた」との言葉を残してさっさと家を出てしまった。家に来て四年目の春だった。
 三人目の母親、秋江は、野津には全く無関心で、
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