いつかこころが目覚める朝に/ホロウ・シカエルボク
ひとつ動かさなかった
「もう人食いじゃないよ」「この子はここへ来て人間になったんだ」
「そんな勝手な話があるか!」男は叫んだ「償わせる!」男は上着の中から小銃を取り出した
ヨシヒロは反射的に老婆の脇をすり抜け
男に飛び掛かった
だが
今度は男の引鉄のほうが早かった
弾丸はヨシヒロの額を撃ち抜き
ヨシヒロは地面にうつ伏せに倒れた
老婆は厳しい顔でヨシヒロを見下ろし
それから男を見た
男は後ろめたい表情で老婆の視線を受け止めた
「それがあんたの思う正義なら」「あたしがあんたをここで殺したって構わないわけだね」
男は何も言わなかった
黙って背を向けて村の出口へ歩いて行った
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