いつかこころが目覚める朝に/ホロウ・シカエルボク
数匹の猫がヨシヒロの周りに集まっていた
静かな目でじっと動かなくなったヨシヒロを見ていた
老婆は懸命にヨシヒロを引き摺って庭の広い所に連れて行き少しだけ土を被せた
「埋めてやりたいところだけどあたしにはもう無理なんだ」「いろいろな生物があんたの命を引き継いでくれるよ」
老婆はぜいぜい言いながら家に戻り
仏壇の前に座って長いこと経を上げた
ヨシヒロの身体はしばらくの間酷い臭いを上げたが
それに魅かれてやってきた様々な生物が一昼夜かけて彼の身体を綺麗にした
老婆は庭の見える位置にずっと座って
そんな得体の知れない生物の終わりをしっかりと見届けた
雨がヨシヒロの骨を綺麗にしたあとで
少し土を掘って簡単な墓を造った
猫たちと一緒にその前で長いこと祈った
「さて」やがて老婆は顔を上げていった
「あんたたちのご飯を作らなくちゃいけないね」
そいつが生まれて二十五年目の
穏やかな春の日のことだった
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