いつかこころが目覚める朝に/ホロウ・シカエルボク
 
「お婆さんも?」「あたしはもうすぐだろうね」「猫たちも?」「生きて動いているものはみんなさ」
「死」とヨシヒロは言った
そして
布団に寝かされた老猫をじっと見た
まだヨシヒロはそれを理解していなかった
ヨシヒロは困って老婆を見た
「すぐに判るさ」老婆はそう言ってヨシヒロの頭を撫でた
「生きてるんだから」


数年が過ぎた
ヨシヒロはほぼきちんとした人間になり
老婆は老い
猫は少しずつ減って行った
そのころにはヨシヒロも理解していた
「生きているものは動けなくなる」それが死だと
老婆は家の中のこと以外はすっかりヨシヒロに任せるようになった
ヨシヒロはひとりで上等な米
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