いつかこころが目覚める朝に/ホロウ・シカエルボク
 
じゃないか」老婆は嬉しそうにしていた
嬉しそうじゃないのは若い雌猫だけだった
ヨシヒロがそこで暮らし始めて一年が経ったころ
いろいろと教えてくれた老猫が死んだ
寿命だった
こういうのは前にも見たことがある
とヨシヒロは言った
「母さん」「母さん?あんた母さん居たの?」「猫の…母さん」「育ての親かね」
「母さんもこんなになった」
「そうか」と老婆は頷いた「これは死ぬということだ」
「死ぬ?」「寿命が尽きたんだ」「命は古くなるんだ」「古くなっていくとだんだんと動きが悪くなる」「そして動かなくなる」「動かなくなったときに死んだと言うんだ」
「僕も死ぬ?」「あんたはずっと先だよ」「お
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