いつかこころが目覚める朝に/ホロウ・シカエルボク
 
始めるのだ
たとえそれが定義の難しいヨシヒロのような生物であってもだ
とはいえヨシヒロの場合は筋力も骨格も申し分なかったから
ほんのちょっとしたコツを覚えるだけですぐに立つことが出来た
歩くことが少し難しかった
なにせ猫だと思い込んで暮らしていた人間だったわけだから
「足だけで立つことが出来るようになるとすごく便利になるよ」「なにせあんたには立派な手があるんだから」「あたしの歩き方を見てごらん」老婆はゆっくりと歩いて見せた「あたしは少し腰が曲がってるけどね」
ヨシヒロはしばらく上手くバランスをとることが出来なかったが
老婆を真似るうち次第に出来るようになった
一度コツをつかんでか
[次のページ]
戻る   Point(1)