いつかこころが目覚める朝に/ホロウ・シカエルボク
毛布はとうに失くしていたが
長く伸びた髪が身体を覆いその代わりをしていた
身体中に絡みついた髪は
小動物を油断させるのに効果があった
動きさえしなけれは低木のようだったから
そして
足音を立てるほどには硬くはない足と
全身が筋肉で出来た軽い羽のような肉体と
何かを掴むのに申し分ないふたつの手が
そいつを立派な肉食動物へと変貌させた
そいつには死角がなかった
登ることが出来
泳ぐことが出来
飛ぶことは出来なかったが
石を投げればほぼ確実に当てることが出来た
十数年が経つ頃には
そいつは
森の王となっていた
比較的街に近いその森には
時々猟銃を持った奴らが訪れ
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