スニーカー/yamadahifumi
 
れほどまでに衣食住に事を欠かない世紀があっただろうか

人は夏を冷房の下、冬を暖房の下にいて

そして、テレビの中の事象に

真剣に怒っている



人は一体、何を望んでいるのだろうか?

…多分、ブッダの言ったように

貨幣の雨を降らせたとしても

人の欲望は鳴り止まないだろう



僕は

この世界の中にいて

ふいに、自分の手のひらを見つめる

そこには僕が生きた二十何年という無為の歳月が

皺となって刻まれている



僕はそうやって少しずつ老いていきながら

世界に一人取り残されていく

世界はいつも一つの完備された
[次のページ]
戻る   Point(1)