スニーカー/yamadahifumi
れほどまでに衣食住に事を欠かない世紀があっただろうか
人は夏を冷房の下、冬を暖房の下にいて
そして、テレビの中の事象に
真剣に怒っている
人は一体、何を望んでいるのだろうか?
…多分、ブッダの言ったように
貨幣の雨を降らせたとしても
人の欲望は鳴り止まないだろう
僕は
この世界の中にいて
ふいに、自分の手のひらを見つめる
そこには僕が生きた二十何年という無為の歳月が
皺となって刻まれている
僕はそうやって少しずつ老いていきながら
世界に一人取り残されていく
世界はいつも一つの完備された
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