転倒/いぬぐす
ようになっていた
自分の姿を穴から見たら立ち上がる力もなくなったので椅子になってしまった
穴は椅子に腰かけた 重みが伝わってきた
あまりの重さに声にならない悲鳴をあげた
(あまりにもお粗末な椅子だったので自分を支えられなくなった
椅子は倒れた 穴も一緒に倒れるかと思ったらそのまま立ち上がり
<穴を埋めたいのだけれど無理かな>と言う
<倒れた椅子を元の状態に戻す気は無い>と言う
椅子は倒れたことを泣いて謝った 穴は完全に椅子を見下していた 「あ」の不在の実証
さようならの言葉もなく 穴からは意味のわからない言葉や怒りの虫が湧いて出た
椅子は自分の財産はこの弱々しい椅子
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)