転倒/いぬぐす
椅子そのものだからこれで穴を埋めて欲しいと頼み
自分はこれで消えることになるがそれでもいいかとたずねた
穴はそこまでしなくてもいいと言いつつ椅子を切って穴を埋めていく
椅子は泣いた 穴からいまだに自分が見えたから
誰かに誇れるものが一つも無い自分のことを
自分ひとりの力で立ち続けることも出来ない自分のことを
<埋まったよ>そう言い残して穴だったものは違う道へと進んでいった
残された椅子は自力で立ち上がり人に戻ったあと遮光カーテンを開けて空を見上げた
大きな青い穴がそこにあった 覗いているのは きっと、
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