猫はサワン/MOJO
 
な猫だが、下腹のあたりが膨れていて、孕んでいるようだ。そのうち、猫は部屋のあちこちを物色し始め、クローゼットに入り込み、出てこなくなった。
 清原は次の打席も凡退し、私はクローゼットにそっと近づいてみた。なかを覗くと、猫は私を見ようとしなかったが、両耳を水平に寝かせていて、これは服従、あるいはリラックスのサインである。人差し指で、喉の辺りを触っても嫌がらない。暫らくそうしているうちに、猫はあのごろごろ音を発し、私の掌を甘噛みした。私は猫を抱き取り、ベッドに戻った。あお向けに寝て、猫を胸の上に置き、その前足を閉じた瞼の上にのせてみる。ごろごろ音が私の肋骨に響く。そして、猫の肉球は、かつての凄腕文章
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