猫はサワン/MOJO
私はこの椿事を愉しむことに決めた。私が育った家には、常に猫がいたから、どうすれば唸らなくなるかを知っていたのである。まずは、玄関を閉め、猫の出口をふさぐ。そして、何事もなかったように振舞う。私はベッドに寝そべり、テレビを点ける。猫のことは一切無視する。すると、猫は玄関の辺りでがさごそ音を立てている。出口がなくなって、困っている様子である。TV画面では、ジャイアンツに移籍してきた清原が三振したが、私はひたすら猫の緊張が解けるのを待った。頃合をみて、冷蔵庫から塩鮭を一切れ出し、部屋の真中辺りに置いてみる。脱出不可能であることを悟ったのか、猫は塩鮭に興味を示し、においを嗅ぐが喰おうとはしない。小ぶりな猫
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)