猫はサワン/MOJO
ると、靴やらダンボールの箱やらが挟まっていて、玄関扉が半開きになっていることがあった。そんなある日、あの猫は私の留守中に部屋に入り込み、そうとは知らずに帰宅した私をギョッとさせたのだった。
「またやらかしたか」
半開きの扉のまえに立ち、私は溜息した。挟まっている靴を足で玄関に戻し、扉を閉めると、部屋の奥でなにやら気配がする。私は緊張し、ユニットバスの扉横の壁にある室内灯のスイッチに指を置いた。部屋に灯りが燈ると、小ぶりな虎ブチ猫が、クローゼットの下で、背中を三角にして私を見ていた。そう、あの猫は、衣類が山になっている辺りで、ふーふー唸っていたのである。
緊張が弛みホッとすると同時に、私は
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