猫はサワン/MOJO
に成り下がったのである。
「目覚めたら、次の眠りまで世の中に俺様の時間を貸してやる」
そんなつもりで毎日を過ごしていた私だから、メモをとったあとの、ベッドから洗面所までのほんの数メートルの足取りがおぼつかない。ワンルームマンションの、狭い部屋が散らかっている、というだけのことであるが、この散らかり方がひどい。CDやビデオ、衣類や食器、腐りかけている果物、靴、発泡スチロールのトレイになにやらこびりつき、茶褐色にかびて異臭を放っている。そんなこんなが、板張りの床一面に散乱し、起きぬけの少し遠い意識では、歩行が危険ですらあったのである。当時の私は、玄関に鍵をかけずに出勤していたから、帰宅してみると
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