猫はサワン/MOJO
心中でぽとり、と何かが落ちる音を聴いた気がした。それと同時にベッドから起きだし、ハンマーを持って管理人室へ降りて行き、扉の前に立ち、ドアノブを見つめた。
あれ以来、あの猫は姿を現さない。もしかすると、既にこの辺りにはいないのかもしれない。しかし、ほんのいっときにせよ、あの猫はふてくされの私を癒した。きっと何処かの森で、野ネズミや野鳥を捕獲しながら、数年で土に還るのであろう。私はそう思うことにした。その結末は私を和んだ気持ちにさせた。
さて、話としてはここで終わると体裁が良ろしい。でもせっかくだから、もう少し実際に起きたことの成り行きを聞いてほしい。
つまり数週間後、私はあの人懐っこ
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