まくらとおねしょ/竜門勇気
 
夏のある日
ガイドを雇って森の奥
腐ったヤモリでいっぱいの
毒ガス地帯でマスクを付けた

こっから先では息すんな
五分も持たねえ
肺が錆びるぜ
ガイドが篭った声で喚く

肉のすえた臭いと
二日酔いの頭痛が
マスクの内側で溶けてった

気持ちのいいことだけをさがして
こんなとこまで来ちまった
大きな荷物を背負った仲間が三人
なぜだか
子供の頃の話ばかりしてる

この奥さ
この湖を超えたら
あんたらが言ってたような場所に
たどり着けるはずだ
ガイドがリュックを降ろして帰ってった

湖は今まで見たことのない透明な水をたたえている
残念だけど飲むことも
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